久ブロ

自分の興味や、思い出したことを書いています。

踊るブリーフマン

ニューヨークの地下鉄はスリリングである。トラブルに巻き込まれることもある。変なシーンに出会すこともある。今日はそんなお話しです。

オフィスから家に戻る地下鉄、混まない時間帯を選んで帰る。この日は柔術の朝練をしていたので荷物が多い。なので、できれば座って帰りたいのです。

電車が来ましたよ。「お、ラッキー」という感じで、車内は混んでいない。しかしニューヨークの地下鉄は、混んでいない時は気をつけなければならない時があるのです。詳しい理由は書きませんが、「匂い」の問題があったりするのです。要するに混んでいないのではなく、その車両を皆が避けているだけということ。

慎重に、そしてあまり大きな呼吸をしない様に電車に乗ります。大丈夫そうだ・・。席もかなり空いている。「よかった」ということで、3人がけのドアの前の席に座る。隣にはお婆ちゃんが座っていて、数独をしています。うーん、ニコリの数独でないのは残念だが、一生懸命解いているのが良い。

そんな感じで静かに座っているのも束の間。次の駅で、1人の男性が乗車してくるのです。ビジネスアワーを避けると座れる可能性はあるのですが、その代わりに、ビジネスアワーでは会えない様な人に地下鉄で出会すことになります。この男性、年齢は20代後半(多分)。持ち物は携帯のみ。そして、男性が左手にもつ携帯からは、イヤホンなしで最大ボリュームの音楽が流れてくる。その音楽にのって、右手と首で上下にビートを刻み、好きな歌詞が流れれば、そこの部分だけ吐き捨てるかの様に歌う。

あ〜、ドアの前の席に座ったのは失敗だったわ。この男性、私とお婆ちゃんの前で、ガンガンに音楽を響かせて、ノリノリなのです。誰も聞きたくないのだが、聞かなければならない状況です。お婆ちゃんはすっかり集中力がきれてしまい、数独のマスに数字が埋まらないのでイライラしています。

こんな時、「君、迷惑だろ。静かにしたまえ」とは、ニューヨークで注意しないのが一般常識。言ったらかなりの確率で喧嘩になります。ナイフや鉄砲を持っている可能性もある。それ以上に、言っても相手が聞かないのが明白です。もっというと、イヤホン持っていないから、修正のしようがない。なので、できるだけ見ないようにして、我慢するしかないのです。私は音楽は聴かず、聴いているふりをして、携帯にイヤホンをさし耳栓がわりしていた。

ま、こういう人は周りの人のことは気にしていないよねー。という感じでビートを刻んでいます。それもドアの付近にいるので、いつまでも私とお婆ちゃんの目の前に。坊主頭でスーツ姿のアジア人と数独お婆ちゃんの前でですよ。「おい、君。その音楽、聴かせる相手間違っていないかい?」と本気でツッコミたい。

・・・と考えていた次の瞬間、この男性のジーパンが足元まで下がったのです!ノリノリ過ぎたので、大きめのスボンが、ストンっという感じで。

ファッションなのか知らんが、ジーパンの「尻はき?」というものがありますよね。わざとパンツをチラ見せする、あれです。こんなファッションをする人が通常着用するのは、カラフルなトランクスやボクサータイプのパンツ。しかし、この男性は真っ白のブリーフパンツだったのです。明らかにファッションではないでしょ。単にサイズが合わないズボンが、音楽にノリすぎて下がっただけでしょ。

こんな時、人間は実に楽しいリアクションをするものです。ズボンが下がるなど、誰も予測していない。できるだけ目線を向けない様にしていたはずなのに、その瞬間を見ていた自分が存在します。通常、こんなシーンを見せられて発生する言葉は、「あっ!」だと思います。英語なら「OOps!やOh 」です。この「あっ」には、大丈夫?という優しい気持ちが込められています。それと、彼がトランクスを着ていたら、多分、クスクスと笑って和むところなのです。

しかし、問題は、彼の下着が「ブリーフ」だったこと。おまけに白いブリーフであったこと。これはとっても微妙なんですね〜。詳しくは説明したくないのですが、予測できない事態であるからして、当然無駄毛処理もない。白いブリーフはマジマジと見ると、どことなく汚い部分もありそうで見たくもない。

なんかパンツを差別するのはよくないのですが、トランクスと違って和む気には一切なれないのですよ。はじめは耳障り、で、今度は目障りかい!という感じになってしまった。それは隣のお婆ちゃんも一緒。ズボンが下がった瞬間、私たちが発した言葉は、「は?」と「Waht the ....」だったのです。この言葉には、「あっ」と違って、何してくれてるわけ?という気持ちがかなりの量込められています。

そんな我々のリアクションにはまったく反応せず、この男性、パンツを上げる時もノリノリなのです。歌詞を口ずさみ、首を「ノー、ノー」と言うかのように左右に振りながら、目線は細く口を尖らせながらゆっくりズボンを上げていく。

はい、もういいよ。そこまでして聴きたいなら、ガンガンに聴いてくれ。その後、ビートを刻んでいた右手でちゃんとジーパンを抑えていたのには、笑えた。